COLUMNコラム

冬の超定番!常磐もののアンコウは濃厚な肝が最高!

2022.12.26

常磐ものの中でも、特に“冬の味覚”として人気なのがアンコウだ。深海魚のため少しグロテスクな見た目をしているが、「西のフグ・東のアンコウ」と言われるほど美味しく、高たんぱく・低カロリーで栄養価が高い。コラーゲンが豊富に含まれているため、美肌効果も期待できる。

アンコウが特に美味しい時期は、12~2月頃。福島では、年末年始の忘年会・新年会シーズンにアンコウ鍋が重宝されるという。栄養豊富な常磐の海で育ったアンコウは脂乗りが良く、市場でも高く評価されている。

漁師がつくった無水アンコウ料理・どぶ汁

大平均さん。「子どもの頃、アンコウは商品価値が低く、地元の人だけが食べる魚だった」という

アンコウは「歯以外は捨てるところのない魚」と言われており、調理法も様々。刺身やあん肝、唐揚げ、共酢など多々あるが、いわき市で昔から親しまれている郷土料理が「どぶ汁」だ。特徴は、水をまったく使わずに作ること。水が貴重な船上で、漁師たちがまかないとして食べていたのが発祥と言われている。 いわき市小名浜にある『割烹旅館 天地閣』でも、どぶ汁は冬の定番メニューだ。主人の大平均さんによると、どぶ汁は「ノスタルジーを感じる」料理。アンコウが今以上に豊富に獲れていた時代に比べると、手間や価格を考慮し、どぶ汁を提供する店が少なくなっているという。

大平さんいわく、常磐もののアンコウは「肝自体の味が良い」。特に冬期は、肝に脂が乗って濃厚さが増す。どぶ汁は大量に肝を使うため、アンコウの魅力をダイレクトに味わうことができる。天地閣の場合、アンコウ鍋の10倍以上は肝を使うという。

どぶ汁の材料。身は下茹でし臭みを抜いて使う。特製の肝味噌は、1/3が肝でできている
炒った肝に身を入れ煮ると、水気が出てくる。どぶ汁の水分は、ほとんどがアンコウの身から出たもの

大平さんは、アンコウを「珍しい魚」という。理由は、肝と身を合わせて作る料理が多いから。どぶ汁に限らず、アンコウ料理は基本的に肝ありきで作られる物が多いという。確かに、タイやヒラメなど一般的な魚は、肝を合わせた料理の方が少ない。 肝に注目されることが多いアンコウだが、身も柔らかく美味しい。薄造りにしてお刺身としても食べられる。食感は「タラとフグの中間」だそうで、昆布で締めて水分を抜くとより美味しく仕上がるという。

アンコウの吊るし切り。大平さんはイベントなどでも吊るし切りを披露している

どぶ汁は、たくさんの肝を使うため、現在は贅沢な料理となり、提供する飲食店も限られている。食べると濃厚な肝の旨味が口いっぱいに広がり、ご飯がすすむ漁師料理。アンコウの美味しさが凝縮されたようなどぶ汁は、ぜひ1度は食べていただきたい料理だ。

割烹旅館 天地閣

◎住所:福島県いわき市小名浜下神白字綱取143-23

◎チェックイン:15時~、チェックアウト:~10時

※食事だけのプラン(要予約)もあり

http://www.tenchikaku.jp/

研究を重ね開発した、濃厚なアンコウ鍋

水を使わず野菜も最小限のどぶ汁に対し、アンコウ鍋は、水を使い野菜も豊富に入れる。どぶ汁にも負けないくらい肝が濃厚なアンコウ鍋を食べられるのが『四倉港 うまいもんや やまかく』。「アンコウと会話しながら作る」と言うほどアンコウを愛する、店長の赤津雄基さんに話を聞いた。

赤津雄基さん。アンコウに携わるようになり約10年。「アンコウのかわいい顔が好き」

赤津さんは、北茨城市で生まれ育った。北茨城はいわきと同様にアンコウが名物で、アンコウ料理を出す店も多い。赤津さんは、料理の道に進んだ後、北茨城の飲食店でどぶ汁を食べ、アンコウ独特の臭みを感じたという。そこで、より多くの人に美味しいアンコウ料理を食べてほしいと思い、同店に来て研究を重ねて生み出したのが、『やまかく』特製のアンコウ鍋だ。

調理法は「企業秘密」とのこと。「ほかの店で食べられなくなるくらい美味しい」ことを目指し、肝が濃厚で、臭みの無いアンコウ鍋を開発したという。

常磐もののアンコウは、赤津さんいわく「肝も身も味が濃くて最高」。地元の産地市場で直接仕入れているため、貴重な肝もふんだんに使うことができるという。アンコウ鍋は「お酒が飲みたくなる濃厚さ。身はぷりぷりトロトロした食感」で、お店でも人気のメニューだそう。「アンコウに苦手意識のある人でも食べられる」と、自信たっぷりに語ってくれた。

『やまかく』のアンコウ鍋。オレンジ色の脂は「肝の鮮度が良くないと出ない」

四倉港 うまいもんや やまかく

◎住所:福島県いわき市四倉町東3-136-11

◎営業時間:11時~15時/17時~22時

◎定休日:火曜

家庭でも食べられるアンコウ料理

小野崎幸雄さん。「冬場は寄せ鍋よりアンコウ鍋」。いわきの人にとって、ソウルフードのような存在だそう

冬場は、家庭でもアンコウ鍋が人気だ。鮮魚店の売り場でも、アンコウを並べるスペースが拡大するという。創業約100年の老舗鮮魚店『おのざき』の社長・小野崎幸雄さんに、常磐もののアンコウについて話を聞いた。

最もアンコウ需要が高まるのは、忘年会シーズンの12月。仕入れ価格が高騰するため、人気の家庭用にカットされたアンコウの販売価格も上昇する。小野崎さんいわく、「年が明けると少し相場が下がるので狙い目」とのこと。生のアンコウだけでなく、もっと手軽に食べてもらうため、冷凍のアンコウ鍋セットも販売している。

アンコウ鍋のセット。あん肝入り味噌スープにキムチを追加したものも好評とのこと
「金曜日の煮凝り」。常磐もののアンコウ・ヒラメ・アナゴを使った3種を展開している

アンコウは「地元で獲れる魚なので、鍋に限らずいろんな食べ方をして欲しい」と小野崎さん。鍋用以外にも、様々な形で販売されている。冷凍のアンコウの唐揚げは、年間を通じ人気で、揚げるだけの状態で売られているため手軽に調理できる。また、アンコウをゴロっと煮凝りに閉じ込めた「金曜日の煮凝り」はパッケージもオシャレで、贈り物にしても良さそうだ。

鮮度の高い魚介類を提供するだけでなく、現在は地元企業と組んだ新商品の開発にも力を入れている『おのざき』。震災を経て「みんなで繋がっていかなければ」と一念発起し、委託して加工品を作っているそう。飲み会の場で話したアイデアが商品化に繋がることもあるという。常磐ものを使った商品が、今後も多数開発されそうだ。

株式会社おのざき

https://www.onozaki100years.com/