2022.11.15
近年「常磐もの」に仲間入りし、いわきの“新名物”として期待されているイセエビ。本来は温暖な海で獲れる海産物で、茨城県が安定漁獲の北限とされていた。しかし近年、黒潮に乗ってイセエビも北上。2019年3,747kg・2020年4,483kg、2021年6,159kg……(福島県水産海洋研究センター調べ)と、ここ数年福島県での漁獲量が順調に推移している。2,000kgほどだった震災前に比べると、なんと3倍以上。そのほとんどの漁獲量を、いわき市が占めている。
「いわきのいいものぜんぶある。」がキャッチフレーズの観光物産センター『いわき・ら・ら・ミュウ』でも、新鮮なイセエビを購入できる。『海鮮みやげ まるふと直売店』で働く原田さんに、イセエビについて話を聞いた。
原田さんいわく、「イセエビの水揚げ量が増えてきたのは2~3年前」から。昔から水揚げはされていたが、「こんなに獲れるようになるとは思わなかった」と言う。店を訪れるお客さんも、イセエビが売られていることに驚く人が多いそう。お客さんが次に驚くポイントが、その大きさと値段。
暖流と寒流がぶつかり、栄養塩が豊富でプランクトンが繁殖し、質のいい魚がたくさん水揚げされる福島の海。イセエビは小さなものでも300g。1kgを超える大きさに育ったイセエビも獲れるという。値段は4,500円程~2万円程まで幅広く、購入するお客さんの用途もお祝い事やご褒美が多いそう。
原田さんは、いわきのイセエビを「甘みがあって身もしっかりしているので、とっても美味しい」と太鼓判を押す。イセエビの美味しさをダイレクトに味わえるのは、なんと言っても刺身だろう。 『まるふと直売店』では、自分でさばく自信が無くとも、お願いすれば新鮮なお造りにしてくれる。
イセエビのお刺身は肉厚で、プリっとした食感。これまで食べてきた生エビとは、全く異なる歯ごたえだ。不思議なのが、しっかりした歯ごたえにも関わらず、数回の咀嚼でとろけてしまうこと。
また、お店に併設する海鮮浜焼き店『バーベキュー番屋』では、新鮮なイセエビを焼いて食べることができる。
焼いているだけで、イセエビの香りがたちこめる。そこに醤油を垂らすとぶわっと香りが広がり、さらに食欲がそそられる。分厚く張りのある身を口に入れると想像以上のプリプリ感と、噛むほどに増す甘み。また、濃厚なエビみそにつけて食べるのも贅沢だ。
高価なため、お祝い事に使われることの多いイセエビ。食卓を華やかに彩ってくれることは間違いないので、ここぞというタイミングで新鮮なイセエビを味わってみてほしい。
◎住 所:福島県いわき市小名浜辰巳町43-1 いわき市物産センター『いわき ら・ら・ミュウ』内 1階
◎定休日:『いわき ら・ら・ミュウ』の休館日に準じる
高級品のイメージが強いイセエビだが、手を出しやすい加工品でも楽しむことができる。「“常磐もの”イセエビ」普及を目指し奮闘しているのが、小名浜港近くで水産加工会社『上野台豊商店』を営む上野臺社長。
祖父の代から続く『上野台豊商店』では、いわき名産のサンマやカツオを中心に、数々の加工品を手掛けていた。しかし海の環境が変化し、それら海産物の水揚げ量が激減。これまで提供していた加工品の生産が難しくなり、新しい魚を探していたときに見つけたのがイセエビだったという。
上野臺さんは、イセエビを「海の宝物みたい」と表現する。なかなか手を出しづらい“宝物”のようなイセエビで加工品を作り、「みなさんに喜んでもらえれば」という想いで開発したのが『究極の「磐城イセエビ」セット』。
いわきの食材にこだわるイタリアン『La Stanza(スタンツァ)』と共同開発した商品で、このセットは上野臺さんが「食べたいもの」の詰合わせ。刺身やボイルで食べることが多いイセエビだが、食べ方の可能性は無限大だ。あえて家庭でも食べやすいイタリアンに加工することで、イセエビの新たな魅力を展開している。
こだわったのは、家庭でもお店の味を楽しめる「再現性」。自宅で焼き直し・温め直しすることを想定し、料理人の知恵を借りて「家で食べてもお店で食べるような味や雰囲気」が出るよう工夫した。そのカギを握っているのが、イセエビの粉末。イセエビの殻を乾燥させ、半日かけて焼いたものを工場で粉末にしているのだという。それをピッツァにまぶすことで、家でも「焼きたての窯から取り出したときのにおい」が再現されるそう。
上野臺さんは、「福島の魚をもっと知ってほしい」と語る。震災後、常磐ものの水揚げ量は大きく減っている。また、他産地でも獲れる魚も多いため「競合が多い」。常磐ものを知ってほしいという想いとは裏腹に、なかなかうまくいかない年月が続いていた。
しかしそこに現れたのが、イセエビという強烈な食材。インパクトの強いイセエビを切り口に、「常磐ものをPRしていきたい」と話す。
小名浜港近くで生まれ育った上野臺さんにとって、魚は「あるのが当たり前」の身近な存在だった。自宅には魚の干し台があり、子どもの頃は大量のイワシをかき分けて出かけていた記憶が残っている。人々の“魚離れ”もあり、魚を食べる人が減っていることに上野臺さんは胸を痛めていた。
「常磐ものの美味しさを知ってもらいたい、そして昔の活気を取り戻したい」……そんな想いで開発された『究極の「磐城イセエビ」セット』。
常磐ものの新しい仲間として、地元の人々から大きな期待を寄せられているイセエビ。そのまま食べるのはもちろん、工夫を凝らした加工品も多数展開されている。
新鮮なエビをそのままおいしく♪
普段なかなかさばくことがないイセエビですが、キッチンバサミやスプーンを使えば簡単にさばける!飾りに使った頭はあとで味噌汁に入れて、2度楽しめる♪贅沢なお料理で満足すること間違いなし!