2024.01.09
近年、福島県沖ではトラフグの漁獲量が急増している。栄養豊富な海域で育つ常磐もののトラフグは、肉厚で旨みもたっぷり。「福とら」としてブランディングも進められていて、注目が高まっている。
相馬・双葉沖の冬の味覚といえばヒラメやアンコウなどが挙げられるが、ここ数年注目が集まっているのが「フグの王様」とも称される高級魚・トラフグだ。相双沖では2019年から本格的に漁が始まり、2022年度の水揚げ量は36.1tと過去最多で初年度の10倍以上にのぼった。水揚げが増えた要因としては、地球温暖化による海水温の上昇に伴いトラフグの生育海域が変化した影響と考えられているが、地元は新たな味覚の登場に期待大。ふぐはえ縄漁で獲った35cm以上の活魚に限り「福とら」と名付け、全国に発信している。
「子どもの頃からいろんな魚を食べてきましたが、このトラフグは『うまっ!』と声が出るくらい感動しました。」ーこう話すのは、漁師の石橋正裕さん。相馬双葉漁協のふぐはえ縄操業委員長を務めており、「福とら」のプロモーターとして発信にも力を入れている。石橋さんによると、相双沖のトラフグは見た目以上にずっしりと重く、肉厚なのが特徴だという。クリーミーな白子も天然ものならではのおいしさ。栄養豊富な常磐ものの海域が、旨みが詰まったトラフグを育てているのだ。
相馬市内では、現在11の宿泊施設と飲食店が「福とら」を提供している(2023年12月28日時点)。ホテルみなとやは、2022年から「福とら」を味わえる宿泊プランを設けた。専務の管野芳正さんによると、以前は冬の時期になるとズワイガニを求めて来る人が多かったそうだが、今ではトラフグを目当てに観光客が訪れるようになったという。
トラフグの身は水分が多いため、さばいた後3日ほど寝かせてから使用する。そうすることで身がもっちりとして、旨みが増すのだそう。フルコースでは、刺身(てっさ)、鍋(てっちり)、唐揚げ、3種の皮の酢の物(部位によって食感が異なる)、釜飯に白子焼きと、「福とら」を丸ごと味わうことができる。
管野さんの一押しは、トラフグの唐揚げ。味付けは品評会で日本一に輝いた地元の醤油とショウガだけ。シンプルな味付けが「福とら」の持つ本来のおいしさをよりいっそう引き立ててくれる。
常磐もののニューフェイス「福とら」。プロジェクトはまだ始まったばかりだが、漁協は生態の調査などを通して、相双沖での永続的な漁獲に繋げる動きも進めている。管野さんは「『福とら』のおいしさが全国に広まり、ぜひ相馬に足を運ぶきっかけになってほしい」と話す。